まるわかり美術史

5分でわかる現代アート【抽象画編】

はる
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どうも。勝手にアートナビゲーター、栗鹿の子はるです!

現代アートって、意味不明。
なんでこれが芸術なの?
なんでこれがアートなの?
やっぱり天才の考えることは分からない…。
センスがないと絵の良さなんて分からないのかな。

何を描いてるか分からない絵、何を表しているのか分からない彫刻、そんなのを見るとどうしてもそう思ってしまいますよね。
大丈夫!わたしもです!

これから、5分でわかる現代アート、というシリーズを始めたいと思います。
今回は、特にみんな訳が分からない抽象画編です。

最後まで読んでいただければ、なるほど抽象画ってそこがすごいのか!て理解してもらえるはずです。
では、いってみましょう!

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抽象画が生まれるまでの流れ【ざっくり行きます!】

まずはこれらの絵を見てください。
どこからが抽象画になるでしょうか?

レオナルド・ダ・ヴィンチ〈モナ・リザ〉レオナルド・ダ・ヴィンチ〈モナ・リザ〉

 

クロード・モネ〈夕日の積み藁〉クロード・モネ〈夕日の積み藁〉

 

パブロ・ピカソ〈アヴィニョンの娘たち〉パブロ・ピカソ〈アヴィニョンの娘たち〉

 

ワシリー・カンディンスキー〈最後の審判〉ワシリー・カンディンスキー〈最後の審判〉

 

カジミール・マレーヴィッチ〈白の上の白い正方形〉カジミール・マレーヴィッチ〈白の上の白い正方形〉

 

(※画像は『西洋美術館』小学館より引用)

うーん、ピカソあたりでちょっと迷いそうですね。

では、次に抽象画が登場するまでの、ヨーロッパ近代絵画の流れの中で、大きな転換点をすご〜くざっくりまとめてみました。

ルネサンス絵画(15~16世紀)

見えるものをなるべく正確に絵の上で再現するぞ!

印象派(1870-80年代)

光をもっととらえたい!そのためには目に見えるままに描かなくたっていいじゃないか!

キュビスム(1900-1910年代)

現実のもの(モチーフ)を一度バラバラにして、絵の上でもう一度組み立てみよう!

抽象画(20世紀初め~)

見えるものを描かなくてもいい!いや、何も描かなくたっていい!

どうでしょうか。
覚えておいてほしいのは、どれもそれまでの絵画表現を打ち破って、思い切った新しい試みをしているということ。
では、この流れをなんとなく頭に入れたところで、もう少し詳しく解説していきましょう。
と言っても、流れがわかりやすいように、いろんなことをだいぶはしょってます(笑)。

ルネサンス絵画(15~16世紀)

レオナルド・ダ・ヴィンチ〈モナ・リザ〉レオナルド・ダ・ヴィンチ〈モナ・リザ〉

見えるものをなるべく正確に絵の上で再現するぞ!

ルネサンスといえば、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの三大画家ですね。
彼らを中心に発展したのが、明暗法、遠近法、それから解剖学に基づく正確な人体表現などです。
これらはどれも絵という二次元に、三次元の世界を再現するために生み出された表現方法と言えますね。

ルネサンス以降、ヨーロッパ絵画では、目に見える自然をありのままに再現することが、常に求められてきたと言えます。
画家たちはそのための技法や表現方法を追求してきたわけで、まるで本物のように描ける画家が優れた画家として認められたのです。
今もわたしたちは、写実的な絵を描く人を見ると、絵がうまいって感心しますよね。それはある意味当然のことなんです。

印象派(1870-80年代)

クロード・モネ〈夕日の積み藁〉クロード・モネ〈夕日の積み藁〉

光をもっととらえたい!そのためには目に見えるままに描かなくたっていいじゃないか!

そして19世紀後半になると、みんな大好き印象派が登場します。
ご存知、モネやルノワールなどですね。
彼らの絵を見ると、色も形も実際に見えるものとはだいぶ違います。
なぜでしょう?

彼らは、大きな発見をしました。
それは、物の色って光の当たり方で変わるよね、ということです。
赤いリンゴも、まぶしい太陽の下と暗い室内では、赤の色が違いますよね。印象派は、それを何とか絵で表現しようとしたんです。

そこで絵具をパレットの上で混ぜるのではなく、キャンバスの上に原色のまま塗って、見る人の視覚を通して混ざりあうような工夫などをしました。
結果的にそれまでの写実的表現とは大きく異なる絵が誕生したのです。
でもやっぱり彼らも、現実世界の再現を試みていたことに変わりはありません。見えるものを必ずしも写実的に描かなくてもいい、という抽象画に続くきっかけは生まれましたが、ルネサンスから続く、遠くのものは小さく描く遠近法とかはそのまま残っています。

キュビスム(1900-1910年代)

パブロ・ピカソ〈アヴィニョンの娘たち〉パブロ・ピカソ〈アヴィニョンの娘たち〉

現実のもの(モチーフ)を一度バラバラにして、絵の上でもう一度組み立てみよう!

印象派の登場によって、見えるものを見たままに描かなくてもいい、という未知の扉が開きました。
そこからは一気にパリを中心にヨーロッパの各国で、新たな表現が生まれ始めます。
パブロ・ピカソで有名なキュビスムもその一つです。
ピカソになると一気に解読のハードルが上がる気がしますが、現実の三次元の空間にあるものを、一度バラバラに解体して、二次元の画面に単純化して再構成するというのが、ピカソたちがやったことです。
すごい発想ですよね。
ルネサンスからの遠近法などの絵の描き方が、ここで完全にひっくり返されたのです。

でも、忘れてはいけないのが、ピカソはあくまで現実世界のモチーフを、絵にしているということです。
つまり、ここにきてもまだ、現実にある何かを描く、という一線は超えずに、ギリギリのライン手前に画家たちはいたのです。

抽象画(20世紀初め~)

見えるものを描かなくてもいい!いや、何も描かなくたっていい!

そしていよいよ抽象画の登場です。
抽象絵画の父と言われているのは、ロシア出身でドイツ・ミュンヘンで活動したワシリー・カンディンスキーです。

ワシリー・カンディンスキー〈最後の審判〉ワシリー・カンディンスキー〈最後の審判〉

カンディンスキーとその仲間たちは言いました。芸術とは「自然の模写ではなく、感じたことを深めて色彩や線によって表現する」と。

つまり、ルネサンスからひとつずつ改革を繰り返し、見えるものを見えるままに描かなくてもいい、というところまで来ていた近代絵画は、ここにきて、ついに「現実の何かを表現しなくてもいい」という新たな、そして最終的な段階に踏み込んだのです。
とは言っても、カンディンスキーの作品を見ると、この〈最後の審判〉など、その画題もそうですが、まだ何かを置き換えて表現しようとしているのが分かります。

しかしカンディンスキーとほぼ同時期、カジミル・マレーヴィッチが1918年に描いた〈白の上の白い正方形〉はどうでしょう?

カジミール・マレーヴィッチ〈白の上の白い正方形〉カジミール・マレーヴィッチ〈白の上の白い正方形〉

正方形の白地の上に、傾けた白い別の正方形が描かれているだけです。
これは当然、現実の箱を描いたものではありませんよね。

ここまで見てきたように、絵画はそれまでずっと何かを表すものでした。マレーヴィッチがしたことは、宗教的な物語だったり、風景だったり、形や色、筆のタッチ、そういったものをひとつずつ取り除いていくという挑戦だったのです。
この究極的な試みは、20世紀抽象絵画の口火を切るセンセーショナルなものでした。

こうしてみると、抽象画が何を描いているのか分からない、というのは、当然のことなんですね。
特定の何かを描かない、という新しさが、抽象画の大事なポイントだったわけですから。

20世紀はじめは、カンディンスキーやマレーヴィッチだけではなく、ヨーロッパやロシアでほぼ同時期に、多くの画家たちが抽象的な絵を描き始めます
決して偶然の産物ではなく、近代絵画の流れの中で、生まれるべくして生まれたのが抽象画だったと言えるのです。
作品だけをポンと見せられても「ん?」となってしまう抽象画ですが、そこにいたるまでの流れが分かると、その面白さが分かるような気がしませんか?

抽象画は繰り返されたイノベーションのゴール!

今回は抽象画って何がすごいのか、どうして意味不明なのか、ルネサンスからの絵画の流れの中で見てみました。

こうして絵画の歴史を振り返ると、画家たちが常にそれまでと違う表現を生み出そうと試行錯誤してきたことがわかります。
今風に言うと、イノベーションですね。このイノベーションの繰りかえしこそ、近代絵画の歴史そのものだと言えます。
その中で現実の何かを描く必要すらない!というところまできた抽象画は、ものすごい改革だったことが想像できます。

こうした画家たちによるイノベーションの部分に注目したのが、最近流行のアート思考ですね。ようするに画家たちの、この現状を打破する力みたいなものがビジネスにも応用できるのでは、と言われているんですね。

はる
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このあたりも、またしっかり解説したいと思います!